『NEW JERSEY』所収。
明らかにJEFF BECK GROUP へのオマージュであり、「Going Down」である。リスペクトの仕方として、サビで「I’m going down, down, down~」と歌い、あからさまに種明かしをしてしまっている以上、極めて健全な質のものなのだが、当時の白人ロック界でここまであからさまなのも珍しいのではないか。
学生の頃、「PON CHOPI」なるコピーバンドでブイブイ言わせていた自分だが、この曲を取り上げることになって大苦戦した覚えがある。16分のリフがやたらと難しいのである。ヤングギター誌風に言うなら、「開放弦へのプリング」をウラからオモテからこなし、しっかり16分音符に乗っけなければならないのだ。ギターのみならず他のパートも難易度は相当高く、ほとんどアンサンブルの体を為していなかった。当時の学内バンド界には80年代の余風が残っていて、8ビートやハチロク(6/8拍子の意)の曲がまだまだ主体だったはずだから、尚更である。それでも果敢に本番に挑んだのだが、結果は案の定で、エンディングの哀愁汽笛ギターだけが虚しく鳴り響いていた…。
その夜は、「ボンジョビって上手いよな」みたいな妙な話題でポンチョピ同士しみじみ飲んだのだった。
で、BON JOVI は実際上手いのだ。このリズムでグルーヴさせること自体並大抵のことではない。特にティコの大きな間の取り方が全体に余裕を与えている。リッチーも、この忙しいリフの中、ピッキングハーモニクスなどのアーティキュレーションを試みる暇があるのが憎い。
BON JOVI では珍しい、ソロ回しがあるのも嬉しい。特にリッチーのは、彼のソロの中でも指折りのカッコ良さである。前半の強引にブラッシングを入れてしまうフラッシーさや、後半の激シブなブルーズフィーリングなど、リッチーがギタリストとして一つの極みに達したことを充分に証明するものだ。未だに弾けないぞ、これ。
他にも、蒸気機関車の形態模写を狙ったさまざまな仕掛けや、相当念入りに行われたであろうリヴァーブレーションの妙など、聴き所満載である。
というわけで、BON JOVI の数ある楽曲の中でも、最もプレイヤー冥利に尽きると言える作品である。実力ある歌モノバンドには、バックのメンバーのための「ガス抜き」ナンバーも必要なのだ。レコーディングし終えた後の、彼らの満足げな顔が目に浮かぶ。