『CRUSH』所収。
『KEEP THE FAITH』辺りから量産されるようになった、大仰なバラードの一つ。はっきり言ってこの程度の曲なら巷に腐るほど溢れているわけで、その辺のいわゆる「アマバン」ですら、ちょっと気の利く方ならサラサラっと書き上げてしまうであろうレベルである。
つまり音楽的にどうこうという曲ではなく、自分の身近で大切な人へ、例えば誕生日なんかの特別な瞬間に、面と向かって弾き語りつつ、日頃の感謝を捧げる用の曲なんだと思う。
だから歌詞がいい。いや、クサい。やや長いが訳詞を抜粋すると、
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僕を愛してくれてありがとう
物事が見えなくなったら
僕の目になってくれてありがとう
息ができなくなったら
閉ざした唇を開いてくれてありがとう
その愛を
ありがとう
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…だそうだ。タイプしてるだけで照れてくるのは一体何故だろう。
ちなみにこの曲から十数年前の「I’ll Be There For You」(『NEW JERSEY』)には、
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きみののどが渇いた時は
俺が水になってやろう
きみが酔っ払っている時は
俺がワインになってやろう
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という一節があり、何となく呼応してる気がしなくもない。giveとtakeの立場が逆転している点にジョンの人間的成熟を感じる。
ところで、リッチーの手癖リックに、「ドレラー(ラの前にソが装飾音符で入る)」というのがあるが、この曲のソロって、それをたった一回弾いただけではい終了、みたいな印象がある。
プロデューサー「リッチーさ~ん、ソロ行きます」
リッチー「うぃっす」
プロデューサー「はい、…キュー」
リッチー「ドレラー」
プロデューサー「ハイッ、OK」
そんな光景が繰り広げられたことは想像に難くないのだが、よく考えるとそれって凄いことで、ブルーズマンがチョーキング一発だけで場を成立させてしまうのに似てやしないか。まぁ、ただの横着と言えなくもないが…。
そんなわけで、正直アルバムの3曲目には相応しくない。そこはかつて、かの「Livin’ On A Prayer」や「Born To Be My Baby」が鎮座していた神聖なる場所である。せいぜい8曲目(LPで言うところのB面中ほど)辺りに控えて然るべきではないか。