「ハートカクテル」考 ~ vol.014 彼女のこと – タバコ

へぇ、カルティエからタバコ出してたんだ。

タバコに対するイメージ自体が随分変わってしまったワケで、勝手なものだが、もはやタバコ吸う女性に対しては、「息、タバコくさいんだろうな」とか、「老けるの早そう」とか、とにかくネガティヴな想像しか浮かばない。つまりは、その女性の女性としての魅力を著しく減じる要素でしかない。が、確かに昔は、例えば桃井かおりみたいな、いわゆるアンニュイなお姉様を演出するための必需品みたいなモノだったろうし、吸い口についたルージュなんてのも、艶かしく思われていた。まぁ要するに、「女性が吸うタバコ」に、何か性的なイメージを喚起させられたのだ。2ページ目の最初の、店のカウンターで喫煙する女性なぞ、まさにそのような意味での「女性性を強調するツールとしてのタバコ」を吸っている風である。そう考えると、この数十年ですっかり評価が真逆になったという好例かもしれない、女のタバコというやつは。

主人公の「カノジョ」の方は、「かわいい刺繍のついた布の袋に」タバコとライターを入れているところを見ると、上記の女性に比べて、タバコを通じて性的なイメージを振りまくことはないらしい(ただ、1ページ目の最後のコマに「カノジョ」の喫煙の様子が描かれているが、この吸う時の首の角度やタバコの持ち方は艶っぽくてよろしい)。要は、普通にイイ子なのだが、ニコチン中毒なのである。

この主人公、そんなカノジョを慮って、なんとか禁煙させようと説得を試みる。感心したのは、

「体によくないよ」
「以前より本数減らしているのよ」
「確かに本数減ってるようだけど」「肌にもきっとよくないよ」

と、説得の順序からして、女性の場合、「体によくない」ことより「肌によくない」ことの方が決定的であることを知悉しているらしいことである。その様子は伏目がちで、気弱な風でさえあるのだが、意外としたたかなヤツなのかも知れない。

それにしても、「カノジョに愛を告げる」際に「ハートに流れるブラームス」って、一体どんなのなんだろう。

以上、タバコを止めたい団塊ジュニアのたわごとであった。

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