わたせせいぞう氏の作品は、一話が4ページのものが圧倒的に多い。で、左ページから始まる。右ページから始まれば見開き2面で完結するので収まりがいいのでは、とも思ったのだが、これには理由がある気がする。一つには、掲載誌の都合として、カラーページの節約が挙げられる。見開き2面だと、カラーページ3枚が必要なのに対し、左ページ開始だと、2枚でOKである。
が、そんなケチな理由ではなくて、創作上の理由があるはずだ。「ハートカクテル」の各話を注意深く見ていくと、次のようなパターンが多いことに気付く。
起…タイトルのコマ
承…3ページいっぱいまで
転…4ページ目
結…最後のコマ
このパターンが、なんとも心地よいリズムを産み出しているのだが、とりわけ、4ページ目をめくった時のインパクト、「転」に変ずるカタルシスが、左ページ開始にすることによって最大限に高まるというわけである。
当回は、このパターンによる典型と言っていい。4ページ目をめくったとたん、1975年から1984年に飛び、見事な「結」によって、彼らの時を越えた友情が、胸に迫ってくるのである。