≪BON JOVI 曲解説シリーズ≫ 05-01 ~ I Believe

『KEEP THE FAITH』所収。

NIRVANAとLenny Kravitz が現れて以来、とにかく80年代メタル勢は苦境に立たされていた。ロックであれば、グランジか70年代回帰ぐらいしか、世の中が受け入れなくなってきてしまったのである。例外は確かにいた。GUNS N’ ROSES はLAメタルの最後の光芒みたいに思われてたが、実は70年代を多分に密輸入していたから90年代でも充分ファッショナブルだったし、METALLICAは当初からメインストリームから距離を置いたところでマニアックなファンを育て上げ、結果として逆にグランジ連中からミュージシャンズ・ミュージシャン的な扱いを受けるまでに至っていた。しかし、他のメタルバンドはどうだったろう。OZZY OSBOURNE、WHITE SNAKE、RATT、MOTLEY CRUE、POISON、いずれも時代遅れとして揶揄の対象とすらされた挙句、鳴りを潜めることを強いられていたのだった。

そんな中、極めて貴重なカムバックを果たしたバンドの例が、ここに二つある。

一つは、VAN HALEN。91年に『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』を発表、80年代型HR/HMサウンドの創始者としてさすがの貫禄を見せつけた。そして我らがBON JOVI。翌92年の『KEEP~』で復活宣言、どーのこーの言われながらも意外なほどアルバムはセールスを伸ばし、バイト先のカクテルバーで流しっぱなしにしていたMTVでは連日のようにタイトルチューンがOAされ、いつのまにかトップアーティストに返り咲いていた。

前作『NEW JERSEY』から4年もの歳月が流れ、宙ぶらりんのまま放置プレイされ続けてたBON JOVI ファンへの回答がこれ。BON JOVI に渇きに渇いていた我々にとって、まさに砂漠の中のオアシスと言ってもいい。

グイグイ押しまくる16ビート、そして強烈なフックのサビを聴いて、思わず「BON JOVI 健在なりぃ~!」と叫んだ挙句天を仰いで感涙に咽ぶおめでたい大学生だった自分だが、何よりタイトルにグッと来た。ヨーコ・オノのアートに、脚立を登って上を見ると天井に小さく「yes」と書かれているというのがあったらしいけど、解散説まで飛び交う中辛抱強く新譜を待ち続けたその果てに「I Believe」と言われるのは、それと実によく似た話だと思ってしまった。

フランジャーがややエグめにかかったギターのブラッシングとストラミングが、とにかく爽快。ティコは、間違いなく口を大開きにしてレコーディングしたはずだ。Aメロの抑えた歌い方は、以降のジョンの唱法におけるバリエーションの一つとして確立されてゆく。ダブリングによって粘っこい音色に仕立て上げられたギターソロも絶品。コードに対して効果的なノートを一音一音紡いでいったに違いない。…いや、何はともあれ肝心のソングライティングこそが最も賞賛されるべきだろう。緩急をここまで自在に操る実力は並大抵のものではないし、「酸いも甘いも散々経験してきた俺達だが、今、最高にポジティヴな状態でカムバックしたぜ!」という彼らのメッセージを(おい笑うなそこ)、歌詞とメロディーが120%見事に表現し切っている。

ま、一つだけ難癖をつけさせてもらえるなら、クレジットがジョンのみになっているが、こういう意味合いの曲だからこそ、リッチーの名前も入れてほしかった。

この「I Believe」、前述のVAN HALEN 『FOR UNLAWFUL~』の一曲目「Poundcake」とは、奇しくもベースが16分のルート弾きである点でかぶるせいか、何となく印象が似通う。まぁ確かに、逆境の中を一点突破する意気込みを表すのに相応しい、攻めのリズムといえるかもしれない…。さらに自分の中では、『KEEP~』の「Dry County」と『FOR UNLAWFUL~』の「Right Now」がかぶる。その心は「ベテランロックバンドの感動大作つながり」なのだが、如何。

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