『天地人』に感じるちょっとした皮肉

NHK大河『天地人』。今日で二夜目だが、残念ながら半ばほどからの視聴となった。
良く言えば大河の王道、悪く言えば何の新味もないフツーの大河である。この様式美にほだされて、泣き所できちんと泣ける自分が好きだ。

阿部謙信は、角川映画の『天と地と』の榎本謙信とカブる。「本来の」(つまり通俗的な)謙信のイメージは戦術の天才で毘沙門天に身を捧げた男だから、ある種の狂気を纏っている。彼らの謙信は、それに比すると「狂気」が持つ逸脱性に欠けていて、要はマジメ過ぎるのである。今作の場合は主人公兼続に対してマトモな意味での父性を捧げるポジションだから、謙信があんまり狂気の人でも成り立たなくなってしまうのだろうが、ま、そう考えると、父性を帯びた謙信象というのはやや珍しくもある。

吉川信長。僕が芸能音楽に目覚めたのは大体小学校中学年の頃で、ヒーローは何を隠そう吉川晃司だった。あの肩幅、何とか自分のモノにならないかと、常々イカリ肩をキープするよう己を律していたことすらあった。彼の代表曲、『ラ・ヴィアンローズ』を耳にすると、当時の雰囲気が切なくフィードバックするほどである。ちなみに、作曲は大沢誉志幸で、大沢の『そして僕は途方に暮れる』は僕の中でJ-POPとして不動のNo.1だ。というわけで、吉川信長には大いに期待している。何が「というわけ」なのか分からないが。

私的なちょっとした皮肉は、『風林火山』のGacktが「美的な狂気のアイコン」として謙信を演じたところ、吉川が似たようなポジションに配されたことで、マジメ阿部謙信の立場や如何に、ということである。
たったそれだけではあるし、いつも以上にどうでもいい話なのだが、僕のとりあえずの『天地人』に対する興味は、まずはそこにあるのだから仕様がない。

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