AaliyahとIt Bitesのバラード曲を語ります

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ブログネタに初参加させて頂く。2曲紹介したい。

■Aaliyah 「One In A Million

ティンバランドのプロデュースによる逸品。「チキチキ・ビート」、「バウンス・ビート」、「フューチャリスティック」と、様々にいわれるアレンジスタイルは、彼が元祖、と言うか教祖だが、それをメインストリームの世界に問うた最初の一曲と言っていいだろう。
このスタイルについての音楽的考察はいずれきちんとやってみるつもりなので、ここでは割愛するが、ゆ~ったりとしてボトムの効いた基本リズムの中に、2小節に一度の頻度で起こるチキチキが、何とも心地よい。
その基本リズムがスカスカともいえるほどシンプルなだけに、綿密に計算された重厚なコーラスワークが引き立つ。
歌い手のアリーヤは、それまでの彼女の領域のどこにもなかった世界を突然与えられたわけだが、驚くべきことに、どう振舞うべきかを完全に把握している。グレゴリアンチャントを髣髴とさせるようなモーダルなメロディラインは、決してそれまでのブラックミュージックのように、高らかに歌い上げてはいけないのである。
キーはF#mで、Bm→D→Bm→F#mとコードが変遷するから、サブドミナントとトニックの間を時間をかけてゆらゆらと移ろうという構成だ。僕はこのサブドミナントとトニックの関係をどう処理するかが近年の大衆音楽の「感動系ヒット曲係数」に直結すると勝手に思っているのだが(この辺もそのうち書きたい)、このたゆたう雰囲気は、例えばエリック・サティの「ジムノペディ」のような、印象主義音楽の面持ちさえ湛える。
「貴方の愛は百万に一つ」とは使い古されたフレーズだが、ゆらゆらとした静寂の中でこの言葉がふと漏れ出でたとしたら、充分生々しく響くはずだろう。

■IT BITES 「The Ice Melts Into Water

たった今、この項を書くためにネットで歌詞をチェックしたら、「幼い娘を失った親の悲しみ」を歌ったものだったと判明した。今の今までそうだったとは知らずに20年間近く聴いてきたし(歌詞ぐらいチェックしろよと己に深く恥じていたところだが)、僕なりのこの曲に対する想いはすでに出来上がってしまっているので、一時間前の僕のつもりで書く。
で、このIT BITESなるバンド、当時創刊したばかりだった「Metal Gear」というヘビメタ雑誌で初めて知った。当時のことを僕なりに言うと、LAメタルそのものは終わりを告げたけど、BON JOVIがそのフォーマットを拡大再生産していた時期で、まだまだ世界各地にいわゆるヘアメタルとかヘアバンドとかが沢山存在していて、多少なりともディストーションの効いたギターサウンドを売りにしたい兄ちゃん達は、ミュージシャンなら長髪にしてなんぼみたいな記号的長髪で、多分それがゆえに十把一絡げにされ、前誌を始め、「BURRN!」や「KERRANG!」や「IN ROCK」を通じて、僕らにその音楽が伝えられた、という経緯がある。だから、幾ら彼らIT BITESの素地がGENESISやYESを模範としたプログレだとしても、そのサウンドよりもヴィジュアル的なイメージの方が先行してしまって、売る側(多くの場合本人達も)は意識するとかしないとか以前にそのフィールドで売るしかないから、畑違いの評価しかされなかったことは残念ながら当然なのだ。
で、そんな界隈でどうにかするしかなかった悲劇の「プログレ」バンド、という解釈もありだと思うが、彼ら自身も意識するとはなしにあっち(ヘアメタル)方面に日和ってた、と見せかけて、実はそもそもポップなセンスを多分に持ち合わせていたが「不幸にもプログレが好き」だったバンド、それがIT BITESなのではないかと、勝手に思ってる。
前説が長過ぎた。
プログレ好きの面目躍如、練りに練ったであろう構成がとにかくドラマチックで、7分強のランニングタイムに全く飽きが来ない。静と動の対比が見事であることはこの手の曲の必須課題なのだけれど、とりわけ「静」の方にカタルシスを感じ得るものは、この作品の他にはなかなか見当たらないんじゃないかと思う。フランシス・ダナリーの搾り出すような声、ジョン・ベックの淡く湿った味わいのキーボードに、何度も切ない想いをさせられた。
「氷が融けて水になる」なんて、単なる自然現象だけれど、その過程をこんな具合に音楽にされてしまうと、とたんに美しい詩になってしまう。聴く度に、心の温度が融点を遥か超えてしまうのを抑えられない。

と、下手糞な美辞麗句を語り連ねてしまって随分恥ずかしいのだけれど、そうすることに何ら憚りのない2曲だから、一度ずつでも耳を傾けていただければ幸いである。

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